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2007年 日本中医学交流会大会 座長挨拶 
 後藤学園中医学研究部長 兵頭 明


 今年は「鍼灸と免疫」というとても大きなテーマをいただきました。「免疫疾患に対する鍼灸治療の現状と今後の可能性」について、「鍼灸の免疫系に対する作用」について広くご紹介いただき、今後の可能性について一緒に考えていきたいと思っております。
明治鍼灸大学の篠原昭二先生には、今までの日本の鍼灸院での担ガン患者の治療実績をベースとした可能性と問題点について広くご紹介いただけることになっています。
東北大学の関隆志先生には、海外での研究の成果について、何がどこまで解明されており、また何が解明されていないのか、その手応え、考えられる問題点などについてもご紹介いただければと思っております。
 また「終末期医療における鍼灸の役割」という角度から、国立がんセンター中央病院の鈴木春子先生には鍼灸治療による疼痛緩和、免疫力向上、進行阻止、QOL改善などのテーマについて現場での手応え、可能性、課題等についてご紹介いただく予定でおります。
こういった共通認識をベースにして、今後の臨床、研究における鍼灸の可能性と方向性をさぐり、問題点の解決のためには何が必要なのか、どういった解決法があるのかを討論を通じてさぐっていきたいと思っています。また中医学の考え方を導入した場合、新たにどのような研究デザインが可能なのか、治療の可能性が広がるのかについても、一緒に考えてみたいと思っています。


シンポジストの紹介

 篠原昭二先生について簡単に紹介させていただきます。

 篠原先生は、研究テーマとして
 1、 経絡学説に関する研究
 2、 経筋治療の研究と開発
 3、 脈診、聞診の実態に関する調査、五臓病証判定のための五行スコアの作成などの東洋医学の証に関する研究
 4、 舌診および顔面部望診の研究についての鍼灸診断法の客観化に関する研究
 5、 外科領域における鍼灸治療の実際
 6、 鍼灸と免疫に関する研究
などなど、非常に幅広い研究活動を展開されております。特に本大会のテーマと関係する免疫の方面でのご研究においては、第51回全日本鍼灸学会シンポジウムにおいて、「臨床に即した鍼灸免疫研究の必要性―生体の感受性、病態、刺激の種類によって反応性は異なる」と題してご発表をされておられます。また『医学のあゆみ』では「鍼灸による免疫増強作用」についてご発表をされております。
  本日は、篠原先生には、日本の鍼灸院における担がん患者さんの治療実績はどうなっているのか、どういった成果が収められており、どういった問題点を抱えているのか、といった角度から、ご発表をいただける予定となっております。


 関隆志先生について簡単にご紹介させていただきます。
 関隆志先生は、昭和63年に東北大学医学部をご卒業され、SRS研究所非常勤講師、東北中医クリニック開業院長などをされ、平成12年4月には東北大学医学部附属病院老年・呼吸器内科鍼灸漢方外来を開設されました。また平成15年10月からは東北大学大学院医学系研究科先進漢方治療医学講座講師としてなられ、非常に幅広い臨床と研究に従事されておられます。
 東北大学附属病院老年化/漢方内科における医局員名簿プロフィールをみますと、関先生の「今後の抱負」というところで、「不可能といわれる所にこそチャンスはあると思います。抱負は治療不可能といわれている難病への挑戦を続けること。高齢化社会に役立つ老年症候群の新しい治療法を開発すること。論文をたくさん書きます。」とあり、先生の研究魂の一端をかいま見ることができます。
 今日は、各種研究の簡単なレビューをご紹介いただき、さらにご自身達が挑戦した重症筋無力症の鍼治療についてご紹介いただけることになっております。


 鈴木春子先生について簡単にご紹介させていただきます。
 鈴木春子先生は、平成4年に東洋鍼灸専門学校をご卒業後、現在は国立がんセンター中央病麻酔科緩和ケアチームに所属され、がん患者さんの緩和治療の第一線で活躍されておられます。また無量光寿庵はる治療院の院長でもあられます。
 私が先生のご活躍に注目いたしましたのは、2005年11月に発売されましたメディカル朝日の特集、「病医院に広がる鍼灸」、「鍼灸に何が求められているか」において紹介された記事です。国立がんセンター中央病院で実践されている「体も心も癒す(いやす)全人的治療の試み」と題して、鈴木春子先生のご活躍ぶりが紹介されていました。現在年間の新患者数は100人弱であり、これまで20年間に同院で鍼灸治療を行った患者の総数は1000人を超えるとのことでした。
 最近のある学会で鈴木先生は、「がん性疼痛に対する鍼灸治療の役割−緩和ケアチームにおける役割」というテーマでのご発表をされています。
 今日は、国立がんセンター中央病院麻酔科緩和ケアチームにおける貴重なご経験を多くの皆様に是非、ご紹介いただきたく、ここに鈴木春子先生をお招きすることができました。

 鈴木先生について、あるホームページを見ておりましたら、次のようなご紹介がされていました。皆様にもご紹介しておきたいと思います。

施術風景(国立がんセンター中央病院にて)

父が胃がんで亡くなった30年前、疼痛管理は十分になされていなかった。
苦しむ父を見かね、担当医に「もう少しモルヒネを」と訴えたときの気持ちは、忘れられない。
今ではがん性疼痛の管理も進み、8、9割はモルヒネで改善するが、モルヒネの効きにくい痛みや抗がん剤の副作用によるしびれ、病気の進行に伴う不安やいらいら感などに、 施術風景(国立がんセンター中央病院にて) 鍼灸は全人的治療を行うことができる。
温かい手、笑顔、技術により、がん患者さんのQOL向上を願う私は常に学徒であって、患者さんは先生であり、また父であると思う。

施術風景
(国立がんセンター中央病院にて)


 後ほどの鈴木先生のご発表を心より楽しみにしております。  それでは篠原先生、鈴木先生、関先生の順番でご発表いただき、シンポジスト間の討論、フロアをまじえた討論という形で進行していきたいと思います。 今後の免疫系疾患に対する鍼灸の課題、可能性などについて一緒に考え、明日からの臨床に対する方向性、可能性について、何かヒントとなるものを一緒に模索していきたいと考えております。  また各シンポジストの先生方のご経験および手応え、考えられる問題点、今後のテーマ、可能性、課題などについても、是非ご紹介いただきたいと考えております。


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